第91章

「俺にだけ謝っても、足りない」

黒瀬蓮がそう言い終えるより早く、私はしゃがみ込み、ずっと私を庇おうとしてくれていた神谷怜を腕の中へ引き寄せた。

「美玲は怜くんにも謝るべきよ。叩いたんだから……これで終わりにはできない」

「口先だけの『ごめんなさい』じゃだめ。土下座で謝って」

神谷悠真は私と怜をちらりと見やると、すっと体をずらし、二人をきっちり背中に隠すように立った。

「黒瀬先生。今日の件を完全に揉み消したいなら、最低限、美玲さんが白石紗月と俺の息子に土下座して謝るべきだ」

「神谷悠真……調子に乗るな」

二十数年、ここまで追い詰められたことなど滅多にないのだろう。黒瀬蓮の視線には...

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