第96章

「……パパ……」

黒瀬律は黒瀬蓮の袖をぎゅっと掴み、怯えきった目で見上げていた。

「大丈夫だ。俺とママは別れない。おまえには“ちゃんとした家”がある」

律が何を怖がっているのか、黒瀬蓮には分かっている。彼はひとつ深呼吸して、律にだけ向けるような優しい笑みを作った。

その言葉に撫でられるように、律の肩から力が抜けていく。

――そして私を、憎々しげに睨みつけた。

次の瞬間にはけろりとした顔で、ぴょんぴょん跳ねるみたいに別荘の二階へ駆け上がっていった。

……この子はもう、歪んでしまった。

これ以上、私が気にかける必要なんてない。

律が消えた階段の先を見やりながら、胸の奥がいつもの...

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