第97章

黒瀬蓮の感情の揺れは、すべて私の目に映っていた。

彼の眉間の深い皺に視線が触れた瞬間、私は無意識に唇をきゅっと結ぶ。

「黒瀬蓮、もう決めた? 離婚協議書にこのままサインするのか、それとも裁判にして、法律に財産分与を決めさせるのか」

「裁判だと?」

黒瀬蓮は大きく息を吸い、ゆっくり顔を上げる。視線が、私の顔へ戻った。

「白石紗月。俺が君を放置してた証拠を握ってるから勝てる、なんて思ってないよな? 教えてやるよ。一般人が、一生かけても、俺みたいな金持ちには勝てない」

そう。私は彼ほど金があるわけじゃない。権力だってない。

だからこそ、離婚を決めた時点で、長期戦になる覚悟はできていた...

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