第5章

高校二年の二学期、学校は文化祭の準備に取り掛かっていた。

担任は教室の飾り付け責任者に私を指名した。理由は「家が学校に近いから、荷物を運ぶのに便利だろう」という、あまりにも安直なものだった。

私はペンを握る手に力を込めた。

後ろの席で、田中美咲が鼻で笑った。

「あの子にやらせんの? 材料費だって立て替えられないんじゃない?」

「……自分でやれます」

私は声を絞り出す。

担任は眉をひそめた。

「予算は10万円だ。週末に買い出しに行ってこい。領収書はちゃんと取っておくように」

10万円。

放課後、画材屋の店先でしゃがみ込み、私は電卓を何度も叩いていた。色紙、風...

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