第5章

「考えすぎだ、綾羽」

 颯斗の声には、いつものように上から目線の苛立ちが滲んでいた。

「この手術の成功率はほぼ一〇〇パーセントだ。数日もすれば、元通りピンピンしてるさ」

 私は彼を見つめ、何も言わなかった。

 その沈黙が癇に障ったのか、彼は一歩近づき、声を潜めた。

「今さら心理戦なんて仕掛けるな。ここでごねるのは、単なる道徳的な脅迫だぞ。かやは隣で待ってるんだ。家族全員がな。皆に恥をかかせるな」

「道徳的な、脅迫……」

 私はカサついた唇で、その言葉を反芻した。

 なんという皮肉だろう。他人の首にナイフを突きつけている人間が、被害者の非協力を責めているのだから。

 その時、...

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