第113章

一瞬、空気が凍りついた。私はソファに座ったまま、指先がぴくりと強張る。

「……何?」

聞き間違いだと思った。

でも――記憶だって、間違うことがあるの?

高校三年生のあの頃。受験のプレッシャーで、車に乗った途端に眠ってしまった。

記憶の中で、父は長い時間ハンドルを握っていた。どこへ向かっていたのかは分からない。ただ私は後部座席で、母の膝を枕にして、甘い眠りに落ちていた。

「音楽、もう少し小さくして。西子、寝ちゃってる」

朦朧とした意識の向こうで、母が小声で父をたしなめるのが聞こえた。

「城輔と高架の上で落ち合う。そこから一緒に行く」

父が何かを続けて言ったはずなのに、そこは途...

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