第12章

怖くて身体を丸め、頭を抱えた。声も出せない。目を向けることすらできない。

血の匂いと悲鳴が路地にこだました。雨は容赦なく叩きつけ、夜は真っ黒で、相手の顔は見えなかった。

ただ――背が高くて、手加減がなくて、確実に殺しにいっている。それだけは分かった。

遠くでサイレンが鳴った瞬間、ようやく心臓が腹の底に戻る。

「警察だ!」

警官が駆けつけたときには、殴っていた大きな影は、よろめきながら逃げ去ったあとだった。残ったのは、地面に広がる血だまりだけ。あれは幻じゃない。確かに「いた」。

「誰にやられた?」と警官が短く訊く。

私は隅で縮こまり、黙り込んだ。

「クソ、あいつはイカれてる! ...

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