第186章

「――君が……俺にくれたんだ」

星の指先が、標本の右下をそっとなぞる。そこには黒いサイン――MOTOKAWA。本川のローマ字表記。

私は星を見上げたまま、息を呑んだ。

「……私が? あなたに、贈ったの?」

――この標本、全部を?

「流れ星の美しさは、一瞬で消えるところにあるって言っただろ。昙花だって、たった一度咲くだけで、全部をさらっていく」

星は横顔のまま私を見た。いつも通り掠れた声なのに、そこには言い尽くせない孤独と、悔いと、自己嫌悪が滲んでいた。

「命は短い。永遠に留めたいなら……こうするしかない」

壁一面の蝶の標本を見た瞬間、背筋がぞわりと粟立った。

――生きてる。...

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