第32章

後になって知った。あの夜、瀕死の私をホテルに置き捨てたのは、白野恵美の父親が倒れたからだ。

酒に溺れていた最中、突然の脳出血。入院費に治療費、その後のリハビリ――とにかく金が、いくらあっても足りない。

藤原浩史は「最高」しか選ばない。個室は当然、腕のいい付き添い、名医のチーム、最上級のリハビリ施設。

恵美のためなら、数万だろうが数十万だろうが、数百万、数千万だって、まばたきひとつせずに出す。

……なのに、私にだけは、底意地の悪さが限界まで研ぎ澄まされる。

白野恵美は、当たり前みたいに彼の優しさを受け取っていく。

一方の私は、重たい枷を背負わされたまま。

私は彼に借りがある。

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