第50章

「……食べろ」

星の手は傷だらけだった。しかも、転んでできたような雑な傷じゃない。明らかに――誰かが、わざとやったものだ。

箸は使えない。食事は両手のひらで茶碗を包むように持って、口へ運ぶしかない。

星は一瞬ためらって、それでも結局、茶碗を置いた。部屋の隅へ身を引いて、黙り込む。

私はできるだけ優しい顔を作り、手を差し出した。

「手、見せて」

警戒心の強い子だ。けれど私が手を伸ばしたまま待っていると、長い逡巡の末、星はおずおずと手を預けてきた。

その隙に、私は手の甲も掌も、指先まで丹念に確かめる。

――赤い痣はない。

私を殺したあの男にあった、あの赤い痣が。

つまり、星は...

ログインして続きを読む