第68章

私も周囲に目を凝らし、鈴宮若葉の手を取って自分のそばへ引き寄せた。

「誰かいるの?」

若葉が小声で訊き、箱の中にも視線を落とす。

私は首を横に振り、路地の少し先に立つ黒い影を見据えた。

こちらの視線に気づいたのか、影はすっと身を翻し、闇に溶けるように消えていく。

私は顔を上げ、星を一瞥した。

星の瞳の奥に渦巻く殺気はまだ消えていない。薄暗い路地に立つその姿は、まるで地獄から這い上がってきた悪魔みたいだった。

恐る恐る呼ぶ。

「……星?」

彼が振り向いた瞬間、さっきまでの禍々しさが、目に見えるほどすうっと引いていく。代わりに浮かんだのは、澄みきった、無垢そのものの表情。

「...

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