第72章

早山家が林原汐瀬の祖母の延命に手を貸してくれるなんて、最初から期待していなかった。けれど林原矢城の切り札を知った瞬間、胸の奥で「なるほど」と腑に落ちた。

林原矢城は、私がまだ昔みたいに扱いやすい林原汐瀬だと思っているのだろう。――それは大きな勘違いだ。

かつての林原汐瀬なら、林原矢城やその妻に情が残っていたかもしれない。血のつながりという鎖に、どこかで縛られていたかもしれない。

でも、私は違う。

私の両親は、私が十八のときの交通事故で亡くなった。林原矢城とその妻は――私にとって、親を名乗る資格すらない人間だ。

「お父さん、誤解です。私が言いたいのは……今の私は早山家の実権を握ってい...

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