第73章

林原家を出て、私はひとりでタクシーに乗り、かつての「家」へ向かった。

両親が事故で亡くなったあと、借金を返すために家の不動産はほとんど手放した。唯一残したのが、この古い部屋だ。ここには、私と両親の記憶が全部詰まっている。

車を降り、久しぶりの場所を見上げる。胸の奥が、言葉にできない形でざわついた。

植木鉢の下に隠していた鍵を取り出し、しばらくその場で立ち尽くしてから、ようやく扉を開ける。

家の中は静まり返っていた。私の写真。両親が使っていた小物。

見た目は昔のままなのに、そこにいるはずの人だけがいない。

ソファに腰を下ろし、壁に掛かった絵をぼんやり眺めた。

全部が――夢みたいだ...

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