第74章

「ねえ……あの殺人犯の正体、知ってるんでしょ?」

星が黙ったままなので、私は彼の手をぎゅっと握りしめた。感情が先走って、声が震える。

「誰なの。教えて」

星の瞳に、さっと狼狽の色が走る。逃げるみたいに身を翻し、私に背を向けた。

「……知らない」

「知ってる!」私も焦れて声を荒らげた。星が相手の素性を知っているのは明らかなのに、どうして言わないの。

星は前へ前へと逃げるように歩き、頑なに口を閉ざす。

私はその背中を追い、何度も問いかけた。

けれど、どれだけ聞いても答えてくれなかった。

警察に相談することも考えた。陸田哲や鈴宮若葉に話すことも。

でも、今の私は林原汐瀬だ。本川...

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