第80章

しばらく狂ったみたいに荒れてみたら、逆に肩の力が抜けた。だって――過去の本川西子は、もう死んだんだから。

私はもう、本川西子じゃない。

藤原浩史に振り回されることもない。

彼が見せた悪夢も、かつての恩も、全部返した。清算は終わってる。

もう私が彼に借りはない。借りがあるのは、あっちだ。

私の命。――それに、お腹の子の命。

立ち去ろうとした、そのとき。スマホが鳴った。

鈴宮若葉からだ。

「林原汐瀬、警察が西子の携帯を復旧した。生前、最後の通話の録音が……戻った」

東区の路地へ行く前、白野恵美との通話は全部、録音していた。

これが、私が人生でいちばん賢かった選択かもしれない。...

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