第86章

藤原浩史を警戒するように見つめた。顔色は沈みきっている。

――また何を発作起こしてるの。

「誰に向かって呼んでんの? 気持ち悪いんだけど」

そう吐き捨てて藤原浩史を押しのけ、エレベーターを降りようとした。

なのに藤原浩史は、突然、執着じみた力で私の手首をつかみ、ぐいっと引き戻す。

「……お前、西子だろ」

掠れた声。そこに混じる、抑えきれない興奮。

胸の奥がひやりとした。けれど平静を装い、もう一度突き放す。

「頭おかしいなら他所でやって。ここは早山グループよ。あんたの家じゃない」

扉が開き、社員たちが次々と降りていく。気づけば、エレベーターの中に残ったのは私と藤原浩史、それに...

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