第8章

「それで、明日さん、こちらの方があなたの——」

玲子は目を丸くして、私の向かいに座る慎人を見つめた。

「不倫相手?」

私は仕方なく笑みを浮かべ、隣にいる慎人の肩を軽く叩いた。

「中島慎人。私の幼馴染。幼稚園からの付き合いで、一緒に神社へお参りしたこともあるの」

慎人は軽く頷き、玲子に会釈した。

彼は黒縁の眼鏡をかけており、レンズの奥の瞳は少し疲れているように見えたが、それでも穏やかで力があった。

「実はね、お医者さん以外で、私の病気のことを話したのは慎人だけなの」

私の声は柔らかかった。

玲子はレンズを慎人に向けた。

「中島さん、どうして明日さんの『不倫相手』...

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