第5章

 海人はスマホを下ろし、何も言わなかった。

 車内の誰も、彼の顔色に気づいていない。由香子はまだ聡に何か話していて、声はやけに軽い。保志は前方の道路を見つめたまま、時おりバックミラーでちらりと後ろを確かめる。

「Uターンして」

 海人が口を開いた。声は平坦だった。

「遺体安置所へ」

 保志が訝しげに横目で見る。

「……は?」

「今朝、海上保安庁がこの近海で遺体を引き上げた」海人は一拍置いてから言った。

「真理奈だって」

 由香子が先に笑った。

「あり得ないって。あの子、泳ぎ得意でしょ。絶対どこかの岸に上がって隠れてるのよ。あんたたちを焦らせたいだけ」

 聡も頷き、鼻で笑...

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