第7章
聡はその場に立ち尽くした。頬に残る赤い痕はまだ引かず、ひりひりと熱い。ただ由香子の背中を見送るしかない。彼女が廊下の角を曲がり、そのまま視界から消えていくまで。
いつもの視線を思い出す。やわらかくて、気遣いがあって、彼が落ち込んだときには黙って抱きしめてくれる、あの目。
けれど、さっきの目は違った。
どこが、と言葉にはできない。ただ胸の奥の何かに細い亀裂が走り、そこから冷たい風が吹き込み、息が詰まりそうになる。
廊下の反対側で、海人が自分の部屋のドアを押し開けた。
中には保志がいた。ドアに背を向け、手元にはタブレットが置かれている。
海人の足が、わずかに止まる。拳が...
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