第8章

 神宮寺誠は狂った。

 それが、星見市の上流階級における共通認識となった。

 葬儀を終えた後も、彼は会社に戻ろうとはしなかった。ただ狂犬のように、あの誘拐事件に執着し続けた。

 警察は三人の実行犯を逮捕した。主犯格は前科持ちの男だった。

 取り調べの日、神宮寺誠はあらゆるコネを使って傍聴をねじ込んだ。

 マジックミラー越しに、彼はふてぶてしい顔をした犯人を睨みつけていた。

「あの女か?」

 犯人は歯を爪楊枝でつつきながら、悪びれもせずに言った。

「結構しぶとかったな。俺たちは金が欲しかっただけなんだよ。旦那に電話しろって言ったんだ。そしたら旦那が全然出ねえし、しまいには電源切...

ログインして続きを読む