第102章 隠し通す

田中は胸の奥に沈んだ思考をそっと押し込み、相変わらず穏やかな声で、何事もなかったかのように告げた。

「奥さまは、先ほどお出かけになりました」

「出かけた? どこへ? それに、なんで電話が繋がらないんだ」

薄井礼央は間髪入れずに問い返す。胸のざわつきは、むしろ強くなっていった。

田中の落ち着きすぎた口ぶりが、かえって不自然だった。

名取佳奈が理由もなく外へ出ることはない。まして、わざと彼の電話を取らないなんて。

「申し訳ありません、旦那さま。奥さまは詳しくは仰いませんでしたので」

田中は表情ひとつ変えず、さらりとかわす。

「もしかすると、携帯の充電が切れてしまったのかもしれませ...

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