第103章 誘惑

浴室の扉を閉めた、その瞬間だった。彼女の顔から柔らかな微笑みがすっと消え、代わりに浮かんだのは、底意地の悪い笑み。

汚れた服を手早く脱ぎ捨て、あらかじめ用意していたシルクのナイトウェアに袖を通す。

薄手で、襟元はわずかに開いている。肌に吸い付くような生地が身体の線をあらわにし、狙いすました艶っぽさを滲ませていた。

ほどなくして浴室を出ると、須藤唯はひとつ深呼吸し、薄井礼央へ歩み寄る。同時に、悔しさと怯えを混ぜた表情をきっちり作る。

それから、わざと足を滑らせた。

「きゃっ!」

甘くか細い悲鳴を上げ、身体のバランスを崩したまま、少し先でスマホを見つめてぼんやりしていた薄井礼央へ倒れ...

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