第105章 質問する資格はない

名取佳奈はその一行を見つめたまま、指先がじわりと冷えていくのを感じた。次いで胸の奥から、どうしようもないほどの滑稽さと、底冷えするような寒さが湧き上がる。

――本当に見ていたのだ。しかも、わざわざ問い詰めてきた。

千里も離れた場所で別の女と旅行し、風だの月だのと浮かれているくせに、こちらの一挙手一投足だけは監視する暇がある。

何様のつもり?

薄井礼央だから? 自分が名目上の妻だから?

放っておかれても、都合のいいときだけ呼び出され、支配され、従って当然だとでも?

馬鹿馬鹿しいにもほどがある。

考えがまとまる前に、スマホの着信音が唐突に鳴り響いた。静まり返った楽屋裏には不釣り合い...

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