第108章 彼女は戻ってくる

「礼央、これ……佳奈が置いていった手紙。それと、離婚協議書……佳奈、今回は……本気で離婚するつもりみたい」

須藤唯はわざと最後の数語に力を込めた。唇の端には、かすかな得意げな弧が浮かぶ。

本当なら名取佳奈にどう出るか考える手間があったはずだ。けれど当の本人が自分から消えてくれた。唯にとっては、面倒が一つ減っただけ。

薄井礼央の視線が、唯の差し出した白い封筒に釘づけになる。

真っ白な封筒。差出人の名は、どこにもない。

その瞬間、礼央の眉間がきゅっと寄った。心臓を見えない手で鷲掴みにされたみたいに、ぞわりとした不安が胸の奥から一気に広がり、全身を侵食していく。

黙ったまま手を伸ばす。...

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