第112章 彼女はきっと彼を待っている

喉を裂くような辛口の強い酒が、ずるりと喉奥を滑り落ちる。食道を灼き、鈍い痛みを残していくのに――薄井礼央の胸の奥に溜まった苛立ちと喪失感は、ちっとも薄まらなかった。

名取佳奈のいない誕生日。

どれだけ豪勢な料理が並んでも、どれだけ場が賑やかでも、彼にとっては空っぽだ。意味がない。

礼央は感覚が死んだみたいに、グラスを空けては自分で注ぎ、また飲む。周りもそれを見て、気を遣うようにグラスを上げ、付き合い酒を重ねた。

カチン、コトン。グラスが触れ合う音の合間に、個室の空気はどんどん酒臭く濃くなっていく。

須藤唯は、礼央の無茶な飲み方に顔色を変えた。慌てて手を伸ばし、またグラスを持ち上げよ...

ログインして続きを読む