第116章 彼女が注いだ心血

名取佳奈に関する話を不意に耳にした瞬間、薄井礼央の胸に、理由のわからない期待がふっと灯った。ここ数日まとわりついていた重さまで、いくらか薄れる。

「荷物が多いのか?」

低い声で訊ねる。

「少なくはないですね。全部で九点です。身につけるアクセサリーもありますし、普段使いの小物もいくつか。どれも名取さんがご自身で最後まで見ていらして、とても精巧です」

受付の声には、抑えきれない感嘆が混じっていた。

「薄井さん、ご都合がつくなら、できれば直接お越しください。現物で照合していただきたい品がございますので」

薄井礼央は短く考え、すぐに答える。

「分かった。三十分後に着く」

通話を切ると...

ログインして続きを読む