第117章 まだチャンスはあるのか

「薄井さん、隠すことでもありませんので率直に申し上げます。私は名取さんの才能を心から評価しています。審美眼が抜群で、デザインは潔く、それでいて温度がある。この業界では本当に稀です。ですから当時、こちらから正式にお声がけしました。うちのスタジオでチーフデザイナーとして迎えたい、あるいは提携でもいい。私たちが場を用意するから、名取さんはデザインだけに集中してほしい。条件は――名取さんの言い値で、と」

薄井礼央が、はっと顔を上げた。

「……彼女は、受けたんですか」

中島社長は残念そうに首を振る。

「いいえ。名取さんはとても丁寧にお断りになりました。『この業界でやっていくつもりはありません』...

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