第148章 身分は簡単ではない

「ご家族の方は外でお待ちください。近づかないで!」

医療スタッフがそれだけ言い捨て、救急処置室の扉がゆっくりと閉まっていく。頭上の真っ赤な『処置中』ランプが、ぱっと点いた。

その刺すような赤が、重たい岩みたいに名取佳奈の胸にのしかかり、息が詰まる。

佳奈は扉の前で棒立ちになったまま、閉ざされたドアを睨みつける。全身が冷え切り、手も足も勝手に震えた。

さっき廃ビルで見た中島院長の凄惨な姿が、何度も何度も脳裏に再生される。思い出すたび、胸の奥が刃物でえぐられるみたいだった。

涙が音もなく頬を伝い、冷たい床にぽたりと落ちて、小さな濡れ跡を広げる。

――もし、助からなかったら。

考えた...

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