第31章 治療を諦めるな

運転手は名取佳奈の顔色がさっと変わったのに気づき、声を落として尋ねた。

「お客様、どうされました? 何か……?」

名取佳奈は胸の奥で荒れた波を押し込み、できるだけ平静を装う。

「運転手さん。お願い……このあと車の多い交差点で、少しスピードを上げて。後ろの車、撒いてください」

運転手は一瞬きょとんとしたが、彼女の視線を追ってルームミラーを見た途端、すべてを察したように小さく頷く。

「承知しました。お任せください」

名取佳奈は後方の車から目を離さないまま、頭をフル回転させた。

絶対に撒かなきゃ。

ここで捕まって、薄井礼央に「出ていくつもりだ」と知られたら――必ず止められる。

こ...

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