第50章 彼が料理をしている?

「先輩。退院のお迎えに来ました。……嫌がられないといいんですけど」

そう言って彼はにこりと笑い、病室へ入ってくるなり名取佳奈の荷物を手際よくまとめ始めた。

まだ身体が本調子ではない佳奈は遠慮せず、ベッドの縁に腰を下ろして、陸野雲平が片づける様子をぼんやり眺める。

「……今回はありがとう。あなたにはずいぶん助けてもらったわ。私にできることなんて、せいぜい……あなたのリサイタルで、一緒に最高の一曲を作るくらい」

雲平はふっと目を細めた。

「先輩が元気で、笑っていてくれるなら、それでいいんです。俺が欲しいのはそれだけ。先輩には、先輩自身のために生きてほしい」

佳奈は息を吸い込み、指を折...

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