第53章 社長は洗濯をする

「五億は諦めろ。だが五千万なら出せる。これが俺の最大限の譲歩だ。それでも足りないなら、お前の好きな家をもう一軒買ってやる」

名取佳奈は鼻で笑った。

「言ったでしょ。五億。1円だってまけない」

薄井礼央がそれほど須藤唯を大事にしているなら――いっそ彼に、存分に「見せる」機会を与えてやればいい。そうでなければ、その深い愛情も埋もれてしまう。

そう思った矢先だった。

名取佳奈の手首が、ぎゅっと締め上げられる。

薄井礼央が彼女の手を握り込んだ。骨の隙間に食い込むんじゃないかと思うほどの力。眉間は深く、険しく寄せられている。

「佳奈……お前、俺を追い詰める気か」

高い地位に長くいる男だ...

ログインして続きを読む