第61章 また何を企んでいるんだ

「触らないで! 汚い!」

あまりにも激しい拒絶に、薄井礼央の手が宙で固まった。すっと顔色が落ち、目元の温度が消える。

「佳奈……お前、どうしてもそういう態度を取るのか」

歯を食いしばった声には、押し殺した怒りが滲んでいた。

「悔しいのは分かる。でも唯は、わざとじゃない。もう許してやれないのか? 自分を痛めつけるのも、俺を苦しめるのも――もうやめろ」

名取佳奈は鼻で笑った。

「私が、あなたを苦しめてる? 薄井礼央、勘違いしないで。苦しめられてきたのはずっと私よ。私はただ、静かに消えたかっただけ。もう二度とあなたと関わりたくないのに、何度も何度も追いかけてくる。いったい、どっちがどっ...

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