第82章 勘定をしに来た者

まさか、におい袋が薄井礼央の車にぶら下がっているなんて。

名取佳奈の視線に気づいた薄井礼央が、わざわざ一言添える。

「唯から、これを返してもらったんだ。代わりに、頭痛に効く生薬を調合して渡した。こっちより、よく効く」

名取佳奈の表情は、ぴくりとも動かない。

自分が贈ったにおい袋が、こんなふうに雑に扱われる。――それは、この数年の自分が薄井礼央の生活の中で「いてもいなくても同じ」だったことと、きれいに重なっていた。

……もういい。とっくに、どうでもいい。

佳奈が顔を背けて黙り込むと、薄井礼央も薄い唇をきゅっと結び、それ以上は言わなかった。

車はそのまま走り続ける。車内の沈黙は、溶...

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