第91章 大切に思っていない言い訳

二人は静かに食事を続けた。言葉は多くないのに、不思議と空気はやわらかく、居心地がいい。

陸野雲平は終始、さりげなく彼女を気遣っていた。紙ナプキンを差し出し、食べるペースを見て「ゆっくりで」と声をかける。穏やかで、丁寧で、優しい。その在り方は、薄井礼央の冷たさと歪んだ執着と、あまりにも対照的だった。

名取佳奈は黙々と口を動かしながら、胸の奥で確信していく。誰となら一緒にいていいのか。誰を、もう手放すべきなのか。

食事が終わりかけた、そのとき。

スイートルームのドアが、どんどん、と乱暴に叩かれた。

せかせかと急かすような、苛立ちをぶつけるような力任せの音が、部屋の静けさを一瞬で裂く。

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