第93章 会食

そう言い終えると、彼は名取佳奈の冷え切った視線をもう直視できなかった。踵を返し、別荘を足早に出ていく。背中には、ほんのわずかな狼狽が滲んでいた。

これ以上ここにいたら、彼女の拒絶と冷淡さを、もっと突きつけられるだけだ――そんな恐れがあったのだろう。

薄井礼央の車が別荘の敷地を出ていって、ようやく名取佳奈は視線を引き上げた。表情は一片も動かないまま、身を翻して階段を上がり、自室へ戻る。

結婚してからずっと使ってきた寝室。広く、上品に整えられているのに、ここを「家」だと思えたことは一度もない。むしろ、煌びやかな檻。何年も彼女を閉じ込め、愛情も熱も、すべてすり減らしていった場所。

今はなお...

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