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「ヴァレン・ソーン王子、並びにタラッサ様のご入場です」

アナウンスの声が壮麗なボールルームに響き渡る中、私たちは姿を現した。その敷居をまたいだ瞬間、群衆はまるで示し合わせたかのように左右に分かれ、私たちのための道を開けた。

一歩、また一歩と部屋の中央へ向かうたび、どよめきと潜めた囁き声の波が集まった人々の中を駆け巡る。この騒ぎが、私の目を引くガウンと、胸元に収まる極上のエメラルドのネックレスだけによって引き起こされたというのは、あまりに控えめな表現だろう。黒のタキシードをいとも容易く着こなすヴァレンが、私と同じくらい注目を集めていることに疑いの余地はなかった。だが、群衆の詮索するような視線...

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