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ケンゾーの車に乗って一時間以上が経っていた。静寂を破るのは、単調なエンジン音だけ。私は一言も発しなかった。最後に目にした宮殿の光景と、後に残してきた人々の顔が頭から離れなかったからだ。さよならを言えなかった理由を、彼らがいつか理解してくれるよう、そして、何の説明もなく――この道を選んで――立ち去った私を許してくれるよう、願い続けていた。

ケンゾーは頻繁にこちらに視線を送ってきた。その気遣いは明らかだったが、無理に会話を促すことはなかった。彼の静かな忍耐に感謝した。一度か二度、どうにかして彼にかすかな微笑みを返した――逃亡を手伝ってくれたことへの、無言のありがとうのつもりで。だが、その微笑みが...

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