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鼻から深く息を吸い込み、目を閉じて、空気中に漂う残り香に意識を集中した。微かだが、紛れもない――雌狼の痕跡。私が追っていた、あの狼のものだ。だが、その香りに脅威的な気配はなかった。そのことから、以前枕元にあったメモはEHが自ら置いたもので、今回は違うのだという私の疑いは、ますます強まった。彼女はEHの手下なのだろうか?もしそうなら、ブルームーンの群れにいる六つの戦士部隊のいずれかに所属していることになる。だが、一体何者なんだ?

一つだけ確かなことがある――もし彼女が密偵だというのなら、そのやり口はあまりにも杜撰だ。隠密行動という概念がないかのように、部屋の明かりを片っ端からつけて押し入ってき...

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