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兵士が差し出した手から携帯電話を受け取り、再びケンゾーに電話をかけた。しかし今度は、繋がらないどころか電波そのものが完全に消えてしまった。イカロスに目をやると、彼の表情からすぐに事態を察したことがわかった。私の胃がキリリと痛む。彼は躊躇なく自分の携帯を取り出し、ケンゾーに電話をかけ始めた。だが、無駄だった。私と同じく、彼の画面にも圏外と表示されている。

「クリス」イカロスは私の隣に立つ兵士に向かって、鋭く顎をしゃくった。

クリスは自分の携帯を回収して確認し、首を横に振った。

「くそっ!」イカロスは拳を握りしめ、状況を分析するように辺りを見回しながら、苛立ちを顔に浮かべた。

一秒た...

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