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獣は私の目の前にそびえ立ち、巨大な顎を下げて刃のような歯列を剥き出しにした。

私の十インチのナイフはまだその胸に突き刺さったままだというのに、傷はまるで堪えていない様子だ。燃えさしのように熱い呼気が顔に吹き付けられると同時に、獣は飛びかかってきた。肉を食い千切らんと構えられた歯。私は間一髪で身を屈め、ナイフを引き抜きざま、その胴体を横薙ぎに切り裂いた。

喉の奥から獣のような咆哮が迸り、その不気味な響きが耳を突き刺す。横に跳び、私を狙って振るわれた剃刀のように鋭い爪をかろうじてかわした。速い――今まで対峙したどの狼よりも速い。だが、恐怖を噛みしめている暇はなかった。私は接近するリスクを冒して...

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