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息を呑み、思わずハドリアンから顔を背けたが、それはかえってうなじの曲線を晒すだけの結果となった。彼がさらに顔を近づけると、その不敵な笑みは一層深くなる。冷たい吐息が肌を掠め、ぞくりとした震えが全身を駆け巡る。心の準備などできていない感覚の洪水に、一気に火がつけられたかのようだった。

「お前の匂い……」彼が囁く声は低く、誘惑の色をたっぷりと含んでいた。「丸ごと喰らってしまいたくなる」

その言葉は私の心の奥深くにある琴線に触れ、心臓が制御不能なほど高鳴った。彼はくすくすと静かに笑い、その面白がる様子が私の混乱をさらにかき立てるだけだった。

「気をつけな」彼は意地悪く口元を歪め、警告した。「あまり興...

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