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金髪の男が、私の手首を掴もうと飛びかかってきた。けれど、私は間一髪で身を捻ってそれを躱した。

「触らないで!」私の叫び声が、淀んだ空気を切り裂いた。

「まあ、そんなに肩肘張るなよ、お嬢さん」蛇のような目をした男が、ねっとりとした口調で言った。その声と同じくらい鋭い笑みを浮かべて。「約束するよ。終わりまでには快感で叫ばせてやる。俺たちが、ちゃあんとね」

私は一歩後ずさった。心臓が肋骨を打ちつける。背後には、棚と棚の間に通路があったはずだ。危険な賭けだが、それが唯一のチャンスだった。視界の端に、手の届く範囲に置かれた書類の箱が映った。考えるより先に、私はそれを掴むと、ありったけの力で奴らに向...

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