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コーヒーを淹れるバリスタの視線が、ずっと私に注がれているような気がしてならなかった。その動きには何か不穏なものがあった。獲物――私――を見張る、捕食者の集中力そのものだった。背筋に冷たいものが這い上がってくる。こみ上げてくるパニックに心を乗っ取られそうで、私は慌てて視線を逸らした。でも、外に立つイカロスの姿が見えている限り、呼吸は次第に落ち着き、不安も薄れていった。

「あ、コーヒーが来たわ!」カップを運んでくるレイフに気づいて、ミレイユが陽気な声を上げた。

彼はテーブルにカップを置いた。ミレイユにはほとんど目もくれず、彼の注意を引いているのは明らかに私の方だった。レイフの私を見る目は不気味で、...

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