第6章
新の手の中にある瓶を見つめる。私の心臓の薬。小麦粉のキャニスターの陰に、うまく隠したはずだったのに。
「どこで見つけたの?」
「そんなこと、どうでもいいだろ」彼の青い瞳は冷たい。「問題は、なんであんたがこれを持ってるかってことだ」
瓶に手を伸ばすが、彼はそれを引っこめる。「新、お願い――」
「ジゴキシン」彼はゆっくりとラベルを読み上げる。「心不全の治療薬、か」私を見上げる。「調べたんだ」
血の気が引く。やっぱり。新は昔から、賢すぎるのが玉に瑕なのだ。
「あなたが思っているようなものじゃない」
「本当か? だってネットによれば、この薬は深刻な心臓病に使われるって書...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
11. 第11章
縮小
拡大
