第9章

「恵美!」光に体を揺り起こされた。「起きろ! 火が!」

廊下は黒い煙で充満していた。炎が壁を舐めるように這っている。

「新はどこ?」

「自分の部屋だ! 俺が行く!」

しかし、光が廊下を進もうとした途端、さらに炎が燃え上がった。父があちこちにガソリンを撒いていたのだ。

「窓だ!」光が叫んだ。「奥の寝室へ!」

彼は私を自分の部屋へと押しやり、窓を開けた。

「お前が先に!」

「あなたを置いて行けない!」

「すぐ後から行く! 早く!」

私は屋根に這い出し、地面に飛び降りた。

「新!」家の中から光が叫ぶ声がした。「どこだ!」

その時、彼が見えた。新の部...

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