第5章
藤原静子が話し終えたあとの沈黙は、そう長くは続かなかった。
「待ってくれ」二軒隣の年配の男が、詩織の祖母をじっと見つめていた。「あんた、藤原静子さんだな」
静子は視線を逸らさなかった。
「うちの義理の親の家を取り仕切ってた。詩織が引き継ぐ前、何年もずっと」
「そうです」
その名前が群衆に波紋を落とした。何人かが目配せを交わし、遊歩道にいた夫婦が身を寄せ合う。誰かが言った。「藤原家って――この別荘地の物件の大半を扱ってる家じゃないの?」
「六十年だ」年配の男が言った。彼は今、瑛太を、さっきとは違う表情で見ていた。
詩織はそんなことには目もくれなかった。
彼女は私の横にしゃがみ込...
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