第8章

有希はノックもせずに入ってきた。

運転してきたときのままの服装――改まったものではない。それなのに、ドアをくぐった瞬間、瑛太は自分でも気づかないうちに半歩、後ずさっていた。

有希はまず私を見た。長く、静かな視線。それから瑛太を見た。

彼女は人を連れてきていた。灰色のブレザーを着た女性で、すでに携帯端末に目を落とし、仕事としての顔を崩さない落ち着いた所作をしている。頼まれもしないのに、彼女はサイドテーブルに書類の入ったフォルダを置いた。

「共有口座からの振替は――詩織が手配してくれたわ」有希は言った。詩織に一瞬だけ視線を向ける。「それはこれとは別の話。……西村瑛太。神崎メディアは三年前...

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