第8章

 個展の開幕三日前。

 私は成瀬に、メディアの独占取材を調整するために関西へ出張に行くと告げた。二日ほど家を空けることになる、と。

「こんな大事な時期に?」

 成瀬は少し狼狽えた。

「現場でトラブルがあったらどうするんだよ」

「設営は完了してるし、進行表も共有済みよ」

 私は荷物をまとめながら言った。

「この取材は重要よ。あなたの絵の価格を倍にするチャンスなんだから。行かなくていいの?」

 「絵の価格が倍」という言葉に、成瀬の目が輝いた。

「行く! もちろん行ってきてくれ! ごめん、冴。君は本当に僕の女神だ」

 私を送り出すとき、彼の顔には隠しきれない笑みが張り付いていた...

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