第100章

救急救命センターの廊下に、衣擦れの音と、男の荒い息遣いが反響していた。

蒼司はまるで地獄の底から這い上がってきた修羅の如き様相だった。全身は煤で黒く汚れ、纏っている服はもはや元の色が判別できないほどだ。

「医者だ! 医者はどこにいる!」

彼の切迫した怒号に、ナースステーションにいた若い看護師は驚きのあまり手にしたトレイを取り落とした。

数人の医師がストレッチャーを押して狂ったように駆けつけ、蒼司の腕の中にぐったりと横たわる人影を見るや、顔色を変えた。

「急げ! 処置室へ! 酸素吸入の準備を!」

蒼司は未来をストレッチャーに乗せた。その瞬間、彼の手は微かに震えていた。

処置室の扉...

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