第29章

彩衣は羽龍の言葉に耳を貸さなかった。それ以上に、彼は未来を信じていたのだ。

「未来は、挨拶もなしにいなくなるような子じゃない」

そう言い切ると、彼はそばにいた数人の学生に向き直り、指示を出した。

「手分けして校舎と事務棟の方を探してきてくれ。未来が何かトラブルに巻き込まれていないか確認するんだ」

「はい、先生!」

学生たちは弾かれたように駆け出していった。

杏那は顔に貼り付けた笑みが崩れそうになるのを必死に堪え、それでも猫なで声で彩衣を宥めた。

「先生、そう怒らないでください。羽龍さんも時間を気にされているだけですわ、印象が悪くなりますもの。お姉様だって、よほどの急用でもない限...

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